【キーウ 8月24日】
本日、ウクライナ最高会議(ヴェルホーヴナ・ラーダ)は「独立宣言(独立法)」を採択し、ソビエト連邦からの離脱と国家主権の確立を宣言した。宣言は、共和国領域内の全権限・資産・軍民機関をウクライナが継承すること、国内法が連邦法に優先することを明記。あわせて、独立の是非を国民に問う全土投票を12月1日に実施する方針が示された。モスクワでのクーデター未遂の混乱を受け、体制の帰趨が揺らぐ中での電撃的な決断である。
議事堂前の広場には青と黄の旗が林立し、群衆は合唱と歓声で採択の瞬間を祝った。議会指導部は「主権国家として国際社会に参加する」と述べ、各国政府と国際機関に対し承認と外交関係の樹立を呼びかけた。経済面では、価格安定と物資流通の確保、通貨・財政運営の移行設計が急務とされ、国境管理や治安機関の編成見直しも検討課題に挙がる。
一方、連邦当局は各共和国との協議継続を模索しており、黒海沿岸や工業地帯での資産帰属、軍指揮系統、対外条約の承継など法技術的整理は山積だ。西側諸国は「平和的で民主的な手続き」を条件に慎重姿勢を保ちつつ、早期承認の是非を協議している。バルト三国をはじめ主権化の動きが連鎖するなか、欧州の政治地図は再び描き替えられつつある。
きょう掲げられた旗は、単なる象徴ではない。制度、資源、境界、そして人々の生活を支える仕組みを自ら築くという約束だ。独立国家ウクライナの船出は始まったばかりであり、冬を迎える前に舵取りの巧拙が問われる。
— RekisyNews 国際・政治面 【1991年】