樺太犬タロ、札幌で死去 南極“奇跡の生還犬” 北大で余生、推定15歳

【札幌 8月11日】
南極観測隊の樺太犬として“奇跡の生存”で知られるタロが本日、札幌市内の北海道大学で老衰のため息を引き取った。推定15歳。生還後は同大獣医学部で手厚い飼養を受け、児童の見学や学生の実習にもたびたび姿を見せていた。

タロは昭和基地の第一次越冬隊に随行した樺太犬の一頭。悪天候と氷況の悪化から犬ぞり隊の全頭が基地に残置され、一年余りを自力で越冬した末、翌年の隊によって弟犬ジロとともに生存が確認された。タロは帰国して札幌へ。以後は研究・教育に携わる“名誉隊犬”として穏やかな余生を送っていた。

訃報は学内外に瞬く間に広がり、構内の飼養舎前には花束と手紙が置かれた。観測隊OBは「氷原の風雪に耐えた気力は、帰国後も変わらなかった。多くの人に生きる強さを教えてくれた」と目を赤くする。獣医学部の関係者は「高齢に伴う衰えはあったが、最後まで落ち着いていた」と静かに見送った。

北大は近く教職員と学生、観測隊関係者によるお別れの会を開き、今後の保存・顕彰の方法を検討する方針。市内の小学校からは「南極のタロはわたしたちの勇気」と記された寄せ書きが届き、教室では当時の写真を使った特別授業の準備が進んでいる。

氷の大地を走り、帰国後は学都で多くの人に撫でられてきた名犬が、静かにその生涯を閉じた。

— RekisyNews 社会面【1970年】

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