【フォール=ラミー 8月11日】
サハラ南縁の内陸国チャドが本日、フランス共同体からの完全独立を宣言し、国名をチャド共和国とする新体制が発足した。首都フォール=ラミー中心部の広場では朝から祝砲が鳴り、三色旗が降ろされると新国旗が掲揚された。臨時政府首班は独立宣言に署名し、「友好を保ちつつ自立の道を歩む」と演説した。
式典には各地から市民が集まり、伝統衣装の隊列や太鼓隊が行進した。政府は当面、行政・治安・通貨の三分野でフランスと協力協定を結び、治安部隊の訓練と官僚機構の移行を進める。関係者は「国境管理と首都圏治安の安定が最優先」とする一方、教育・医療の拡充、道路網と通信の整備を“百日計画”に掲げた。
チャドは綿花と家畜を主要産品とする農牧国。輸出入はカメルーンやナイジェリア方面の港に依存しており、政府は物流回廊の確保と為替・関税制度の安定化を急ぐ。経済当局者は「干ばつリスクの高いサヘル地帯で生産性を高めるには灌漑と市場アクセスが鍵」と語った。
国際的には、今年相次ぐアフリカ諸国の独立の流れの中での誕生。周辺各国は祝電を送り、地域機構を通じた協調に期待を示した。フランス政府も「歴史的な一歩を祝う。新国家の発展を支える」との声明を発表している。
首都の夜空には花火が上がり、独立記念の歌が響いた。若者の一人は「きょうから私たちの国づくりが始まる」と語り、広場は歓声に包まれた。
— RekisyNews 国際面【1960年】