ワイマール憲法、成立 エーベルト大統領が署名・公布 14日施行へ―「人民主権の共和国」枠組み整う

【ワイマール/シュヴァルツブルク 8月11日】
昨月31日に国民議会が可決した新憲法(ドイツ国憲法)に本日、エーベルト大統領が署名し公布した。施行は8月14日の見込み。第一次大戦後の混乱を経て、ドイツは「共和国」と「人民主権」を根本に据える新体制へと歩を進める。議場のあるワイマールの街は歓声に包まれ、各都市でも号外が配られた。

新憲法は、①20歳以上の男女普通・平等・秘密投票による比例代表制の帝国議会(ライヒスターク)、②州代表によるライヒスラート、③大統領の直接公選(任期7年)とその下での首相(宰相)任命――という三つ巴の統治構造を定めた。大統領には議会解散権に加え、治安の著しい攪乱時に基本権の一部停止や命令を出せる非常権限(いわゆる第48条)が与えられる。一方で、基本権章では言論・結社・信仰の自由、法の下の平等に加え、労働・社会保障に関する条項労働者評議会の規定が明文化され、“社会国家”の理念が打ち出された。

政界では、可決を主導したワイマール連合(社会民主党・中央党・ドイツ民主党)が「立憲の完成」を強調。連合の議員は「選挙で選ばれた政府が責任を負い、権利章典が市民を守る時代が始まる」と語った。一方、右派の一部は非常権限条項の運用に警鐘を鳴らし、急進左派は社会化の速度に不満を示すなど、国内世論はなお流動的だ。

国民議会は当面ワイマールで審議を続行しつつ、政府機構は順次ベルリンでの常駐体制へ移す方針。対外関係ではヴェルサイユ条約下の難局が続くが、政界関係者は「新憲法が外交・財政再建の法的基盤となる」と期待を寄せる。内務当局は施行日に合わせ、省令・移行規定の整備を急いでいる。

街頭では黒赤金(三色旗)が掲げられ、祝賀の楽団が行進。労働者の一人は「戦場の暗闇を越え、票(ひとり一票)で国を動かす季節が来た」と語った。ドイツはきょう、新しい憲政の扉を開いた。

— RekisyNews 政治面【1919年】

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