【ストックホルム 8月10日】
本日午後、スウェーデン海軍の新鋭戦列艦**「ヴァーサ」**が処女航海の出航直後、港外へ向けて帆を張ったところで急に大きく傾き、そのまま沈没した。場所は王宮前の波止場を離れてまもなくの湾内。乗員・来賓・家族ら数百人が乗り込んでいたとみられ、数十人が行方不明。救助艇と港湾の船がただちに現場に向かい、引き上げ作業が続いている。
目撃した船員は「一陣の風で船体がぐらりと傾き、下層砲甲板の砲門から一気に海水が流れ込んだ」と証言。出航セレモニーに合わせて礼砲を行うため、砲門の一部が開いていたという。艦は姿勢を戻せず左舷側へ横転、帆柱の先が水面に消えるまで数分とかからなかった。
「ヴァーサ」は64門級の二層砲甲板を備える大型艦で、対外戦に備え急ぎ建造が進められていた。華麗な艦飾と強力な火砲で注目を集めていた一方、上部の重量が大きく見積もられていたとの指摘が造船関係者から出ており、港務当局は復原性(安定性)不足の可能性を含めて原因を調べている。
王都では急報を受け、海軍本部が事故調査委を設置。艦の設計・積載・出航時の指揮系統、さらに当日の風向風力や礼砲の手順を総点検する。港湾当局は航路を一時封鎖し、通行船に減速と離隔を指示。沿岸には救護所が設けられ、家族が安否情報を求めて詰めかけている。
海軍関係者は「艦隊の中核として期待された新造艦の損失は大きいが、まずは人的被害の最小化と早期引き揚げを最優先する」と強調した。現場海域は浅く、船体の大半は港内に留まっているとみられる。引き続き潜水夫の投入と浮揚の可否が検討される見通しだ。
— RekisyNews 国際面【1628年】