【サンサルバドル 3月24日】
エルサルバドルの首都サンサルバドルにある病院内の小さな礼拝堂にて本日夕刻、カトリック教会のオスカル・ロメロ大司教がミサを司式している最中に、狙撃手に銃撃され暗殺された。説教を終え、聖体拝領の儀式に移ろうとした瞬間に放たれた一発の弾丸が大司教の胸部を貫通。居合わせた信徒たちが悲鳴を上げる中、大司教は祭壇に崩れ落ち、搬送先の病院で死亡が確認された。
ロメロ大司教は、軍事政権下で激化する弾圧や人権侵害に対し、「貧者の味方」として公然と批判を続けてきた人物である。昨日の日曜説教においても、軍の兵士たちに対し「神の名において命じる。弾圧をやめなさい」と、政府の命令よりも神の掟に従い、同胞への虐殺を拒否するよう涙ながらに訴えたばかりであった。この命がけの演説が、軍部や右派勢力を極度に刺激したことは疑いようがない。
エルサルバドルでは、一握りの富裕層と軍部が権力を握り、土地改革や民主化を求める市民との間で武力衝突が常態化している。ロメロ大司教は、暴力の連鎖を止めるべく軍部と左派勢力の双方へ対話を呼びかけていたが、その平和への祈りは凶弾によって引き裂かれた。事件直後から市内では緊張が急激に高まっており、暗殺犯の背後には軍関係の「死の部隊」が関与しているとの見方が強まっている。
人権擁護の象徴であった大司教を失ったことで、エルサルバドル国内の対立は修復不可能な段階へ突入したと言わざるを得ない。国際社会からは強い非難の声が上がっているが、国内ではさらなる武力抗争の激化が懸念されている。一人の司祭の死は、この国を十数年に及ぶ凄惨な内戦の闇へと引きずり込む決定的な引き金となるだろう。
— RekisyNews 海外面 【1980年】
アイキャッチ画像 Giovani Ascencio Ardón y Raul Lemus- Grupo Cinteupiltzin CENAR El Salvador – File:Mural_Oscar_Romero_UES.jpg, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=38884098による
