【東京 3月24日】
東京都内を流れる「隅田川」が、来月1日の改正河川法施行に伴い、正式な独立河川としてその名を刻むこととなった。これまで、岩淵水門から下流の区間は「荒川」の本流の一部として扱われてきたが、今回の法改正により、大規模な分水路(荒川放水路)が「荒川」の本流となり、旧来の河道が「隅田川」として再定義される。江戸の昔から親しまれてきた伝統の名が、近代的な治水体系の中で名実ともに復活する。
背景には、1964年に成立した新河川法がある。これまでの旧法では、水系ごとの一貫した管理体制が不十分であったが、新法では一級水系として国が直轄管理する体制が整えられる。これにより、洪水を防ぐための「荒川放水路」が治水の主役(荒川本流)となり、都心を流れる隅田川は、都市景観や文化を象徴する一級河川としての役割を明確にする形だ。
隅田川は古くから歌舞伎や浮世絵の題材となり、都民にとって最も馴染み深い川であるが、行政上の名称と通称の乖離が長年の課題であった。今回の名称分離により、「荒川」と「隅田川」の混同が解消され、それぞれの河川特性に合わせた管理が可能となる。建設省関係者は「治水の安全性を高めつつ、隅田川の持つ歴史的価値を次世代へ引き継ぐための大きな転換点である」と語っている。
来週4月1日の施行を控え、沿岸の各区では案内板の付け替えや周知活動が急ピッチで進められている。春の訪れとともに、「隅田川」という誇り高い名が地図上に再び記されることは、高度経済成長に沸く東京において、失われつつあった郷土の情景を取り戻す象徴的な出来事となるだろう。
— RekisyNews 社会面 【1965年】
