ドイツ、民主主義に幕 ―― 「全権委任法」可決でヒトラー首相に独裁権力

【ベルリン 3月24日】

ドイツ共和国議会(ライヒスターク)は昨日、政府に立法権を委譲する「民族および国家の危難を除去するための法律(全権委任法)」を圧倒的多数で可決した。これにより、アドルフ・ヒトラー首相率いる閣僚会議は、議会や大統領の承認を経ずに法律を制定する権利を手中に収めた。ワイマール憲法に基づく民主的な議会制民主主義は、事実上の終焉を迎えることとなった。

採決は、先月の議事堂放火事件により本来の議場が使用不能となったため、クロル・オペラ劇場を仮議場として行われた。会場周辺はナチス親衛隊(SS)や突撃隊(SA)によって厳重に包囲され、反対派議員に対する露骨な威嚇が繰り返される異様な雰囲気の中で議事は進行した。

ヒトラー首相は演説の中で、国家の再建には強力な指導力が必要であると訴え、「政府を議会から解放する」ための全権を要求した。これに対し、野党である社会民主党(SPD)のヴェルス党首は「自由と生命は奪えても、名誉までは奪えない」と毅然として反対を表明したが、ナチスおよび共産党議員の排除によって過半数を得た連立勢力、さらに保守派の国歌人民党や中央党の賛成により、憲法改正に必要な3分の2以上の賛成が確保された。

この法律の成立により、ヒトラー首相は憲法に反する法律すらも独裁的に制定することが可能となり、司法や報道、結社の自由はさらに制限される見通しだ。ベルリン市民の間では、強固なリーダーシップによる秩序回復を歓迎する声がある一方で、一党独裁による全体主義体制への移行を危惧する沈痛な表情も見られた。

かつて世界で最も民主的と謳われたワイマール憲法体制は、自らが生み出した議会によってその機能を停止させた。ドイツはいま、ナチスによる完全な独裁支配という、未知の暗黒時代へと足を踏み入れようとしている。

— RekisyNews 海外面 【1933年】

アイキャッチ画像 Unknown, colourised by me – own, based on File:Bundesarchiv Bild 102-14439, Rede Adolf Hitlers zum Ermächtigungsgesetz.jpg, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=56587981による

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