【江戸 3月24日】
本日午前9時すぎ、季節外れの激しい雪が降りしきる江戸城桜田門外において、幕府大老・井伊直弼(掃部頭)殿の行列が、突如現れた暴徒らに襲撃されるという未曾有の事態が発生した。現場からの速報によると、井伊殿は登城の途上、籠の中で銃撃および抜刀した刺客による襲撃を受け、その安否が強く懸念されている。
襲撃を実行したのは、水戸藩の脱藩浪士17名および薩摩藩士1名とみられる。一団は、桜田門付近を通過中であった彦根藩の行列に対し、短銃の発砲を合図に一斉に斬りかかった。白昼堂々、将軍のお膝元である城門の目と鼻の先で繰り広げられた凄惨な乱闘に、周囲は一時騒然となった。
井伊大老は一昨年以来、「安政の大獄」と呼ばれる苛烈な弾圧を断行し、尊王攘夷を唱える志士や反対派の公卿らを厳しく処断してきた。今回の暴挙は、それら志士らによる遺恨に加え、勅許なき開国を強行した幕府政治への強い反発が背景にあるものと推測される。
現在、江戸市中には厳戒態勢が敷かれており、幕府は襲撃者の行方を追うとともに、諸藩に対して不測の事態に備えるよう通達を出した。幕府の権威を根底から揺るがすこの大事件は、今後の幕政の行方や、混迷を極める外交問題に計り知れない影響を及ぼすことは必至である。
— RekisyNews 社会面 【1860年】
