電車値上げ反対デモ、暴徒化 ── 都内各地で焼き討ち、軍隊出動の事態に

【東京 3月11日】

本日午後、日比谷公園で開催された電車運賃値上げ反対の市民大会は、興奮した群衆が暴徒化し、都内各地で電車の焼き討ちや新聞社への襲撃が相次ぐ凄惨な騒乱へと発展した。警視庁は直ちに抜刀警官隊を配備したが、事態を収拾できず、ついに近衛師団の軍隊が出動する極めて異例の事態となっている。

発端は、東京市内の路面電車3社が合併し、一律4銭から5銭への運賃値上げを申請したことへの反対運動であった。日露戦争後の重税に喘ぐ市民にとって、生活の足である電車の値上げは「独占資本による横暴」と映った。日比谷に集まった数万の群衆の一部は、集会後に「値上げ断行」を報じた国民新聞社へ乱入。さらに、路上を走る電車を次々と停止させ、石油を撒いて放火した。

夜に入っても騒乱は収まらず、青山や本所の変電所、さらには市庁舎までもが暴徒に包囲された。現在までに数十台の車両が焼失または大破し、負傷者は警官・市民双方で数百名にのぼるとみられる。炎上する車両が夜空を赤く染める中、各停留所には着剣した兵士が立ち、市内は戦時下のような緊張感に包まれている。

政府は今回の暴動を「社会主義者による煽動」として厳しく警戒しているが、その根底には戦後の生活苦に対する民衆の深刻な不満があることは疑いようがない。文明開化の象徴であった電車が、人々の怒りの標的となった今日の惨劇は、近代都市・東京が抱える暗部を露呈させた。

— RekisyNews 社会面 【1906年】

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