【京都・伏見 3月9日】
本日未明、伏見の旅籠「寺田屋」において、土佐脱藩浪士・坂本龍馬および長府藩士・三吉慎蔵が、伏見奉行所の捕り方約30名による襲撃を受けた。薩長両藩の和解という大任を終えたばかりの龍馬は、激しい乱戦の末に負傷しながらも、間一髪で現場を脱出した。
事件の端緒は、寺田屋で働く女性・お龍(おりょう)の機転であった。入浴中であった彼女は、奉行所の役人が館内を取り囲む気配を察知。裏階段を裸足で駆け上がり、二人が寝ていた二階の奥まった部屋へ急報した。この迅速な警告がなければ、両名は眠りの中で命を落としていたに違いない。
踏み込んできた捕り方に対し、坂本は懐に忍ばせていた六連発の拳銃を抜き放ち応戦。室内は硝煙と怒号が渦巻く修羅場と化した。坂本は捕り方の槍を避ける際に両手の親指を深く斬りつけられたものの、三吉が槍で防戦する隙に裏手の屋根へ逃れ、暗闇の中を近くの材木場まで逃走。薩摩藩邸への救援要請により、かろうじて一命を取り留めた。
奉行所側は「不逞の浪士」としての捕縛を狙ったものと見られるが、坂本は現在、薩摩藩の保護下にあり、容態は安定しているという。幕府による尊王攘夷派への弾圧が激化する中、今回の襲撃劇は京の情勢をさらに緊迫させることとなった。
— RekisyNews 社会面 【1866年】
