【パリ 3月9日】
本日、共和国軍の昇り龍、ナポレオン・ボナパルト将軍が、パリ社交界の象徴的な存在であるジョゼフィーヌ・ド・ボアルネ夫人と民事婚を執り行った。イタリア方面軍司令官としての出撃を2日後に控えた緊迫の情勢下での挙式は、軍事的野心と燃え上がるような情熱が交錯する、まさに「革命の時代」を象徴する出来事となった。
挙式はパリのモンドヴィ通りにある役場で行われた。驚くべきことに、提出された書類上ではナポレオンが1768年生まれ(実際は1769年)、ジョゼフィーヌが1767年生まれ(実際は1763年)と記載されており、二人の年齢差をわずか1歳に縮める工作がなされている。これは、年上の有力な未亡人を妻に迎えることへの、若き将軍なりの配慮あるいは執着の表れと見る向きも多い。
新妻のジョゼフィーヌは、かつて総裁政府の有力者バラス氏の寵愛を受けた人物であり、この縁組がナポレオンの軍内での地位向上に寄与したことは否定できない。しかし、知人らが目撃したナポレオンの様子は、政治的な打算以上に、彼女への狂おしいほどの慕情に突き動かされているように見えたという。
ナポレオンは明後日、全軍を率いてアルプスを越える。戦火の絶えないイタリア戦線へ向かう彼にとって、ジョゼフィーヌは単なる「妻」以上の、勝利への霊感(インスピレーション)を与える女神となるのか。パリの喧騒の中で結ばれた二人の運命は、今やフランス、そして欧州全体の歴史と不可分なものとなった。
— RekisyNews 社会面 【1796年】
