【東京 3月8日】
本日、政府は改正「度量衡法」を公布した。今回の改正により、わが国で古来より親しまれてきた「尺貫法」、国際基準である「メートル法」に加え、新たに英国・米国で用いられる「ヤード・ポンド法」が計量の公認単位として認められることとなった。一国の中に三つの単位系が公的に併存するのは極めて異例の事態であり、商業界や工業界に大きな波紋を広げている。
今回の法改正の主眼は、急速に進む貿易の拡大への対応にある。現在、わが国の主要な貿易相手国である英米からの機械導入や、毛織物・綿花といった原材料の取引において、ヤードやポンドの単位が実質的な標準となっている。これまでは便宜的に換算を行ってきたが、今回の公認により、英米製の計量器をそのまま検定・使用することが可能となり、取引の利便性は飛躍的に向上するものと期待されている。
しかし、現場からは困惑の声も上がっている。建築や大工の現場では依然として「尺・寸」が絶対的な基準であり、科学・軍事の分野では「メートル・グラム」が浸透しつつある。ここに「ヤード・ポンド」が加わることで、国民生活における計算の複雑化は避けられない。「どの物差しを使うべきか」という混迷は、しばらく続くことになりそうだ。
農商務省は「世界各国との円滑な交際のためには、英米単位の公認は避けられない道である」と説明している。明治の文明開化から40余年。日本の「物差し」は、伝統と国際化の狭間で、より複雑かつ多様な形へと姿を変えることとなった。
— RekisyNews 産業面 【1909年】
