【東京 3月6日】
本日、東京地検特捜部はリクルート事件を巡る捜査において、日本電信電話株式会社(NTT)の前会長、真藤恒(しんとう・ひさし)容疑者を収賄の疑いで逮捕した。政官界に深く浸透した戦後最大級の贈収賄事件は、民営化を牽引した「情報通信の巨人」のトップ経験者を飲み込むという、前代未聞の局面を迎えた。
調べによると、真藤容疑者はNTTの社長および会長を務めていた期間に、リクルート社の江副浩正被告(贈賄罪で起訴)から、リクルートコスモス社の未公開株「1万株」を他人名義で譲り受け、売却益約2200万円を収受した疑い。引き換えに、リクルート社が手がける「スーパーコンピューター」の再販事業において、NTTが便宜を図るよう働きかけたと見られている。
真藤容疑者は、旧電電公社の民営化を成功させ、財界の「ドクター合理化」と称えられたカリスマ経営者である。その真藤氏が、国策会社としての公共性を問われるNTT法違反という形で逮捕されたことは、国民に大きな衝撃を与えている。本日の逮捕を受け、NTT本社には朝から報道陣が殺到し、株価も大きく動揺を見せている。
事件はすでに、森喜朗氏ら政界の大物や各省庁の官僚トップへと飛び火しており、竹下政権への批判は免れない情勢だ。バブル経済の熱狂が生んだ「政治と金」の腐敗構造が、日本の近代化を象徴する通信事業の最高責任者を地に落とした意味は重い。司法のメスは、この巨額スキャンダルの全貌解明に向け、ついに核心部分へと突き進もうとしている。
— RekisyNews 社会面 【1989年】
