「玉電」待望の産声 ── 道玄坂から三軒茶屋、多摩川へ繋ぐ鉄路が開通

【東京 3月6日】

本日、玉川電気鉄道渋谷・道玄坂上から目黒・三軒茶屋間に及ぶ路線の営業を開始した。都心の繁華街に近い渋谷から、緑豊かな世田谷の農村地帯へと伸びる新たな鉄路の誕生に、沿線住民や多くの見物客が祝杯を挙げている。

開業した区間は、道玄坂上を起点とし、三宿を経て三軒茶屋に至る約3.2キロメートル。明治政府が推し進める近代化の波は、ついに東京の西郊外にも本格的な電気鉄道をもたらした。車体は最新の電動機を備え、これまで徒歩や馬車に頼っていた多摩川方面への往来を劇的に変えるものと期待されている。

今回の開通は、単なる旅客輸送に留まらない。本来の目的の一つは、多摩川の清らかな砂利を都心の建設現場へと運搬することにある。急速にビル建林が進む東京において、良質な砂利の需要は極めて高い。昼は市民の足として、夜は帝都建設の資材を運ぶ大動脈として、この路線が果たす役割は極めて大きい。

三軒茶屋周辺の茶屋や商店では、朝から「玉電」の到着を待つ客で溢れかえった。ある近隣の農家は「これまでは渋谷まで重い荷物を背負って歩いていたが、これからは電車がある」と、その利便性に目を細めている。玉川電気鉄道は今後、さらに路線を延伸し、景勝地として知られる二子玉川方面への接続を急ぐ構えだ。

道玄坂の賑わいと、三軒茶屋ののどかな風景を結ぶこの銀色の軌道は、東京の街がさらに西へと膨張していく「大都市化」の号砲となるに違いない。

— RekisyNews 社会面 【1907年】

アイキャッチ画像 User:Sakurami1 – 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=16596473による

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