「動く写真」日本上陸 ── 神田・錦輝館で初の活動写真興行

【東京 3月6日】

本日、東京・神田錦町の寄席「錦輝館(きんきかん)」において、わが国初となる本格的な活動写真(映画)の公開興行が幕を開けた。フランスのリュミエール兄弟が発明した「シネマトグラフ」を用い、スクリーンに映し出された「動く写真」の数々に、詰めかけた観客からは驚嘆と歓喜の声が上がっている。

興行を主催したのは、実業家の稲畑勝太郎氏である。稲畑氏は留学先のフランスでリュミエール兄弟と親交を結び、最新の映写機を持ち帰った。上映されたのは、フランスの街角を行き交う人々や、駅に滑り込む蒸気機関車などの短編作品である。静止しているはずの壁面に映された映像が突如として動き出すや、最前列の観客の中には「汽車がこちらへ突っ込んでくる」と身をのけぞらせる者もいたという。

今回の興行を支えているのは、映像の内容を解説する「活動写真弁士」の存在だ。本日の上映では、上田布山氏らが登壇し、異国の風景や人々の動きに合わせて巧みな語り口で状況を説明。視覚的な驚きに聴覚的な演出が加わることで、観客は未知の体験に酔いしれた。

これまで「電気館」などで見られた覗き眼鏡式のキネトスコープとは異なり、多人数で同時に鑑賞できるシネマトグラフの登場は、日本の娯楽文化の転換点となるに違いない。神田の夜を彩るこの新たな光の芸術が、今後どのように庶民の生活へ浸透していくのか、その興行の行方に注目が集まっている。

— RekisyNews 文化面 【1897年】

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