【東京 3月6日】
本日、大蔵省は、東京・皇居前に広がる丸の内一帯の官有地約10万坪を、三菱社社長の岩崎弥之助氏に払い下げることを決定した。払い下げ価格は、国家予算の一割近くに及ぶ128万円という巨額なものである。現在、この地は兵舎が立ち並ぶ荒涼とした野原となっており、市民からは「三菱ヶ原」と揶揄されているが、日本を代表する政庁街の隣接地に広大な私有地が出現することとなった。
政府は財政難を背景に、これまでも官有地の民間払い下げを進めてきたが、これほど大規模な都心の土地を一括して一企業に売却するのは異例の事態である。当初、政府は渋沢栄一氏ら財界有志に打診したが、そのあまりの広さと巨額の代金に、各社は難色を示したという。しかし、岩崎弥之助氏は「国家の顔となるべき地を外国資本に渡してはならない」という不退転の決意のもと、三菱の全力を挙げてこの「大勝負」に打って出た。
現在、丸の内は草が生い茂り、狐や狸が住むとも噂される寂れた場所である。しかし、三菱側はこの地をロンドンのロンバード街に倣い、煉瓦造りの近代的なオフィス街へと変貌させる壮大な構想を描いているという。欧米列強に比肩する近代国家としての体裁を整えるべく、日本初の「ビジネスセンター」構築に向けた第一歩が、本日踏み出された。
この未開の野原が、将来的に日本の経済と情報の中心地となるのか。一企業に託された巨大な土地の行方に、京橋や銀座の商人たちのみならず、政財界全体が大きな関心を寄せている。
— RekisyNews 経済面 【1890年】
