最高裁、ドレッド・スコット氏の訴えを棄却 ── 奴隷は「財産」と断じる

【ワシントン 3月6日】

本日、合衆国最高裁判所は、自由を求めて長年法廷闘争を続けてきた奴隷ドレッド・スコット氏に対し、極めて厳しい判決を下した。ロジャー・タニー最高裁長官が言い渡した判決は、スコット氏の訴えを全面的に退けただけでなく、黒人を合衆国憲法が保護する「市民」とは認めないという非情な結論を突きつけた。

判決の核心は、奴隷の法的地位を「人間」ではなく、「所有主の正当な財産」であると定義した点にある。タニー長官は、アフリカ系の人々は「白人が尊重すべき権利を何ら持たない、劣等な存在」であり、独立宣言に記された「平等」の理念も彼らには適用されないと断じた。このため、スコット氏には自由を求めて連邦裁判所に訴えを起こす権利そのものがないとされたのである。

さらに裁判所は、奴隷を「馬や家具と同様の財産」であると位置づけた。この解釈により、たとえ奴隷制を禁止している「自由州」であっても、政府や州法が持ち主からその「財産」を取り上げることは、憲法が保障する財産権を侵害する行為にあたるとされた。これにより、これまで南北の間で守られてきた「奴隷制の境界線」という政治的妥協の枠組みは、根底から崩れ去った

司法が奴隷制を事実上「全米どこでも認められるもの」へと押し広げたことに対し、北部の廃止論者たちは「自由の鐘の音が止まった」と激しい憤りを表明している。一方、南部の奴隷主たちは、自らの所有権が最高法規によって裏付けられたとして、この結果を熱烈に歓迎している。

人間を「物」として固定化した本日の判決は、合衆国を平和的な対話から遠ざけ、取り返しのつかない分裂へと押し流そうとしている。ワシントンの空に立ち込める重苦しい雲は、この国が直面する未曾有の危機の幕開けを象徴しているかのようである。

— RekisyNews 社会面 【1857年】

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