【ロンドン 3月4日】
大英帝国の首都ロンドンの東部、レイトンストーンにおいて本日、交通の歴史を塗り替える画期的な試みが行われた。
北メトロポリタン路面電車会社の線路を用い、蓄電池を動力源とする英国初の電気路面電車が一般に公開され、その滑らかな走行を披露した。馬の力に頼らず、目に見えぬ「電気」の力で鉄路をゆくその姿に、詰めかけた市民からは驚嘆の声が上がっている。
今回の試験走行に使用されたのは、フォーレ式蓄電池を搭載した特別車両だ。これまでロンドンの街を走る路面電車といえば、馬が重い車両を牽引する「馬車鉄道」が当たり前であったが、本日公開された車両は、床下に収められたモーターの回転によって自走する。排泄物による衛生問題や、馬の飼育コストに悩まされてきた運営会社にとって、この「動力革命」は福音となる可能性を秘めている。
実演を行ったラドクリフ・ワード氏は、記者の問いに対し「この電気路面電車こそが、未来の都市交通の標準となるだろう」と自信を見せた。現在はまだ蓄電池の重量や充電効率に課題を残しているものの、煙を吐く蒸気機関車とも、疲弊する馬とも異なる、静かで清潔な移動手段の登場は、過密化するロンドンの都市環境を劇的に改善する一石となる。
ロンドン市内では、ハイゲート・ヒルのような急勾配区間においてケーブル牽引式の導入も検討されているが、この「電気」による自走方式が実用化されれば、より自由で広範な路線網の構築が可能となる。19世紀の終わりを前に、ロンドナーの足は今、馬の蹄の音から「電気の唸り」へと、大きな転換点を迎えようとしている。
— RekisyNews 海外面 【1882年】
