【東京 2月28日】
わが国を代表する作家、川端康成、石川淳、安部公房、三島由紀夫の四氏は本日、帝国ホテルにて共同記者会見を行い、中国で進展する「文化大革命」における芸術弾圧に対する抗議声明を発表した。思想信条の枠を超え、現代文学の旗手たちが結束して政治的動乱に異議を唱える異例の事態に、内外の関心が集まっている。
声明文において四氏は、中国国内で学問や芸術の自由が失われ、多くの知識人が迫害を受けている現状に対し、「学問芸術の自律性を守る立場から、いかなる政治権力による介入にも反対する」と強く表明した。特に、文化大革命の名の下に行われている古典の破壊や、作家たちの名誉剥奪を「人類の文化遺産に対する冒涜」と指弾。これは特定の政治的立場を支持するものではなく、芸術家としての普遍的な生存権を問うものであると強調した。
今回の声明が画期的なのは、その顔ぶれの多様性にある。ノーベル賞候補とも目される伝統美の守護者・川端氏から、左翼的な視点を持つ安部氏、独自の前衛を追求する石川氏、そして行動的民族主義を掲げる三島氏まで、本来は政治的立場の異なる作家たちが「芸術の自由」という一点で固く手を結んだ。会見で三島氏は「隣国の惨状は、他岸の火事ではない」と語り、表現の自由に対する危機感を露わにした。
冷戦下の緊張が続く国際社会において、日本の知性が発したこの峻烈な抗議は、単なる政治批判を超えた精神の叫びとして響いている。権力が文化を飲み込もうとする時代に、彼らが示した毅然たる態度は、表現に携わる者たちの良心の砦として、大きな波紋を広げている。
— RekisyNews 文化面 【1967年】