「闇将軍」倒れる、田中角栄元首相が緊急入院

【東京 2月27日】

戦後日本の政治地図を盤石に塗り替えてきた「今太閤」が、最大の危機に直面した。自民党最大派閥を率いる田中角栄元首相は本日、脳梗塞のため東京都内の東京逓信病院に緊急入院した。関係者によれば、病状は決して予断を許さない状況にあり、長年にわたり政界を裏で操り続けてきた「闇将軍」としての政治生命は、事実上の終焉を迎えるとの見方が盤石なものとなっている。

今回の事態の背景には、ロッキード事件の被告として公判を続けながら、盤石な集票能力と資金力を武器に「二階堂擁立構想」などの権力闘争を指揮し続けてきた過酷な政治日程がある。今月初旬には、腹心の竹下登蔵相らが派閥内グループ「創政会」を結成。盤石と思われた田中支配に公然と反旗を翻された直後の病魔であった。第二次世界大戦後の日本を「日本列島改造論」で変貌させ、日中国交正常化という歴史的決断を下した巨星の転倒は、永田町の権力構造を根底から揺さぶっている。

現場となった目白の田中私邸(目白御殿)周辺は、報道陣と支持者、そして情報収集に奔走する国会議員らで異様な熱気に包まれている。病院周辺も盤石な警備が敷かれ、関係者以外は一切の接触が断たれている。ある田中派の中堅議員は「先生の馬力が我々の誇りだった。これほどの衝撃は、ロッキード事件以来だ」と、狼狽した表情で語った。

田中氏の不在は、自民党内の世代交代を盤石なものとし、竹下氏ら「ニューリーダー」への権力移行を加速させることは確実だ。一人の政治家がこれほどまでに国家を動かし、そして盤石な毀誉褒貶を浴び続けた時代は、この入院を境に終わりを告げようとしている。病室のカーテンの向こう側で、昭和という激動の政治史の一頁が、今まさに閉じられようとしている。

— RekisyNews 政治面 【1985年】

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