【バグダッド 2月26日】
湾岸地域の緊張は本日、歴史的な局面を迎えた。イラクのサッダーム・フセイン大統領は国営ラジオを通じ、占領を続けていたクウェートからイラク軍を無条件で撤退させると表明した。多国籍軍による地上戦「砂漠の剣」作戦が開始されてからわずか2日、圧倒的な軍事力の差を前に、フセイン政権はついに占領維持の断念を余儀なくされた。
今回の撤退表明の背景には、多国籍軍による盤石な空爆と、電撃的な地上攻勢によってイラク軍の精鋭部隊「共和国ガード」が壊滅的な打撃を受けた事実がある。フセイン大統領は「クウェートはもはやイラクの一部ではない」との趣旨を語り、第二次世界大戦以降で最大規模となる多国籍軍の包囲網から逃れるための窮余の一策を講じた形だ。しかし、この表明には「勝利」を強弁する修辞が散りばめられており、国際社会が求める完全な降伏には至っていない。
現場となったクウェート市周辺では、イラク軍が略奪品を積んだ車両とともに北部のバスラ方面へ向けて退却を開始した。対する多国籍軍は、この撤退を軍事的な「再編」と警戒し、攻撃の手を緩めていない。ある米軍幹部は「ラジオでの発言だけでは不十分だ。武器を捨て、明確な降伏の意思を示さぬ限り、我々の任務は完遂されない」と、盤石な構えを崩さずに語った。
退却するイラク軍の車列は、多国籍軍の猛烈な追撃を受け、後に「死のハイウェイ」と呼ばれる凄惨な光景へと変わりつつある。半年に及んだクウェート占領は、独裁者の敗北宣言によって終結へと向かうが、中東の秩序を根底から揺るがしたこの紛争が残す爪痕は、あまりに深い。
— RekisyNews 戦報 【1991年】
