【東京 2月24日】
わが国の子供たちを熱狂の渦に巻き込む、新たなるヒーローが誕生した。ラジオ東京テレビ(KRT)は本日午後6時、連続テレビドラマ『月光仮面』の放送を開始した。白覆面に白マント、そして二挺拳銃を手にオートバイで颯爽と現れる正義の味方は、黎明期のテレビ界においてかつてない衝撃を与えている。この作品は、戦後の復興を遂げつつある日本において、「勧善懲悪」の新たなスタイルを確立し、子供たちの夢と正義感を育む巨大な社会現象へと発展する気配を見せている。
物語の背景には、原作者・川内康範(かわうち こうはん)氏が抱く「憎むな、殺すな、赦(ゆる)せ」という独特の平和思想がある。従来のヒーローが敵を打ち倒すことに主眼を置いていたのに対し、月光仮面は「どこの誰かは知らないけれど」という匿名性を守り、悪人を諭し、正道へ導く存在として描かれている。制作予算が限られる中、屋外ロケを中心としたスピード感あふれる演出や、耳に残る主題歌は、放送初日から視聴者の心を強く捉えた。これは、映画からテレビへと娯楽の主役が移りゆく「お茶の間革命」を象徴する出来事と言える。
現場となった放送直後の街角では、早くも「月光仮面ごっこ」を始める子供たちの姿が見られた。白い風呂敷をマントに見立て、竹箒をオートバイに見立てて路地裏を駆け抜けるその姿は、新時代のヒーローがもたらした熱狂を物語っている。ある家庭の父親は「これほどまでに子供が画面に釘付けになるとは。月光仮面の正体が誰なのか、大人でも気になってしまう」と、微笑みながら語った。ラジオ東京のスタジオ周辺には、次回の展開を心待ちにするファンからの問い合わせが相次ぎ、テレビヒーロー時代の幕開けを祝うかのような活気に満ちている。
この『月光仮面』の放送開始が、国産テレビヒーロー番組の量産を決定的なものとし、後の特撮文化やキャラクタービジネスの基盤を盤石にするのではないかとの見方もある。また、この「正義の味方」という概念が、日本人の道徳観や娯楽のあり方にいかなる影響を与え、半世紀を超えて愛される伝説へと昇華していくのか。月夜を駆けるオートバイの爆音が、日本のテレビ史に刻む新たなる轍(わだち)の行方が鋭く注目される。
— RekisyNews 芸報 【1958年】
