「緑の窓口」前夜、鉄道に電脳の風 ── MARS101稼働、座席予約が秒単位に

【東京 2月23日】

鉄道の旅を支える「予約」のあり方が、本日、劇的な進化を遂げた。日本国有鉄道(国鉄)は、世界最大規模の電子式座席予約システム「MARS101」の全面稼働を開始。これまで駅員が電話と台帳で手作業管理していた座席予約が、中央コンピュータによるオンライン処理へと切り替わった。秋の新幹線開業を控え、膨大な旅客需要を電子計算機で捌くこの試みは、わが国の高度経済成長を支える大動脈の電子化として、国内外から大きな注目を集めている。

背景には、高度経済成長に伴う「国民総旅行時代」の到来がある。国鉄は事務処理の限界を突破すべく、日立製作所と磁気ドラム記憶装置を用いた処理システムを共同開発。これにより、かつて数十分を要した指定席券の発行はわずか数十秒へ短縮された。数万席の在庫をリアルタイムで管理するこの技術は、単なる業務効率化に留まらない。日本が世界に誇るコンピュータ応用技術の先駆的な成功例であり、来るべき高度情報化社会の幕開けを予感させるものである。

秋葉原の「国鉄電子計算機センター」では、巨大な筐体が並ぶ装置を前に、技術者たちが稼働状況を注視している。各駅の窓口から専用端末を通じてチケットが次々と発行されるたび、室内には確信に満ちた熱気が広がった。磁気テープの回転音が響く中、一人の技術者は「『人間の限界』を電子の力で克服できた」と手応えを語る。窓口で切符を手にする乗客の裏側で、目に見えぬ電子の波が瞬時に日本中を駆け巡り、駅の喧騒をこれまでにない整然としたものへと変えつつある。

このMARS101の成功が、後の「みどりの窓口」展開を支える強固な技術的基盤となるのではないかとの見方もある。巨大な公共インフラを支えるリアルタイム・システムの確立が、他産業のデジタル化を強力に牽引し、日本の経済活動をいかなる次元へ押し上げるのか注目される。

— RekisyNews 科学面 【1964年】

アイキャッチ画像 spaceaero2 – 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=4758724による

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