「5億円収受」最高裁が認定 ── ロッキード事件、榎本被告の有罪確定

【東京 2月22日】

戦後最大の疑獄事件として政界を震撼させたロッキード事件は、本日、司法による最終的な審判の日を迎えた。最高裁判所第3小法廷(可部恒雄裁判長)は、受託収賄罪などの共犯に問われていた田中角栄元首相の元政務秘書官、榎本敏夫被告(68)の上告を棄却する判決を下した。これにより、懲役1年、執行猶予3年の有罪判決が確定。同時に、判決の中で「田中元首相が5億円の賄賂を受領した」という事実が最高裁として初めて認定され、憲政史上に残る巨悪の存在が法的に確定した。

この事件は、米国のロッキード社が航空機受注をめぐり、わが国の政財界に巨額の工作資金をばら撒いたものである。田中元首相は一審、二審で有罪とされながらも、最高裁の判断を待たずに一昨年に死去。そのため、秘書官であった榎本被告の裁判が、実質的に元首相の犯罪性を問う「代理裁判」の様相を呈していた。判決は、丸紅幹部から榎本被告へ渡された4回の現金授受を、いずれも元首相への賄賂として厳格に認定した。被告側が主張してきた「政治資金であった」とする反論を全面的に退けた。

本日、判決が言い渡された最高裁の法廷周辺には、早朝から多くの報道陣と傍聴希望者が詰めかけ、異様な緊張感に包まれた。午後3時、上告棄却の報が伝わると、法廷の外では「金権政治に鉄槌」と書かれたビラが舞い、戦後民主主義の試練を見守ってきた市民たちの間に安堵と溜息が入り混じった。榎本被告は表情を崩さぬまま、足早に黒塗りの車へと乗り込み、長きにわたる法廷闘争に終止符を打った。一方、田中派の流れを汲む政治家たちは、この歴史的認定に対し一様に口を閉ざしており、永田町の静寂が事態の重さを物語っている。

第二次世界大戦後の高度経済成長が生んだ「影」の部分といかに決別していくのか、わが国の議会制民主主義の成熟度が広く注目される。

— RekisyNews 社会面 【1995年】

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