【仙台 2月22日】
本日、東北帝国大学臨時理化学研究所の本多光太郎博士(47)と高木弘助手らが開発した新型の永久磁石鋼、KS鋼が正式に特許を取得した。この新素材は、コバルト、タングステン、クロムなどを鉄に配合した特殊な合金鋼であり、従来の主流であったタングステン鋼と比較して約3倍以上という、世界最強の保磁力を誇る。第一次世界大戦の最中、欧州からの技術導入が制限される中で成し遂げられたこの独創的発明は、国産技術の底力を内外に知らしめるものとなった。
KS鋼の名称は、研究を資金面で支援した住友家当主、住友吉左衛門氏のイニシャル(Sumitomo Kichizaemon)に由来する。本多博士は、金属の磁気的性質と熱処理の関係を長年にわたり追究し、独自の「分子磁石説」を打ち立てることで、この驚異的な磁力を実現させた。この強力な磁石の登場により、これまで巨大な磁石を必要としていた電気計測器や通信機器の小型化・高性能化が可能となる。まさに、日本の冶金学が「科学の力による産業振興」を体現した瞬間と言えるだろう。
現場の仙台・片平の研究所周辺では、研究室から漏れる火花の輝きとともに、深夜まで続く実験に立ち会った若き研究者たちの熱気に包まれている。本多博士は「科学は真理の探究であると同時に、実業に資するものでなければならない」と静かに語り、既に次の改良への意欲を示しているという。地元の産業界からは、この新素材を用いた国産の高性能磁石が、海外製品に依存してきた精密機械市場を一変させるのではないかとの大きな期待が寄せられている。
このKS鋼の開発が、わが国の基礎科学が国際的な競争力を持つことを証明し、金属材料学における日本の地位を不動のものにするのではないかとの見方もある。また、強力な磁力を持つ新素材の普及が、今後の無線通信や航空機用計器の飛躍的な発展を支える技術的基盤となるのではないかとの指摘もなされている。欧州の戦火が技術革新を促す中、この「日本生まれの鋼」がいかなる産業的価値を世界に示していくのか、その行方が鋭く注目される。
— RekisyNews 科学面 【1918年】
