ルバング島で小野田寛郎と接触──冒険家・鈴木紀夫「帰国を」呼びかけ

【ルバング島 2月20日】

フィリピン・ルバング島の山中で長く潜伏し任務の継続を唱えてきた旧陸軍少尉の小野田寛郎に対し、本日、日本人冒険家の鈴木紀夫が接触し、帰国を促した。関係者によれば、鈴木氏は「小野田少尉を探す」と公言して島に入り、数日間の探索の末、密林の野営地付近で姿を確認したという。小野田氏は当初、来訪者を敵と見て銃を構えたとも伝えられるが、鈴木氏は「天皇と日本の人々が案じている」旨を伝え、対話の糸口をつくったとされる。

しかし小野田氏は「戦いは終わっていない」との認識を崩さず、帰還には上官の正式な命令が必要だとして応じなかったという。鈴木氏は面会の証しとして写真を携え帰国し、上官の所在を探して再訪する意向を語った。厚生省派遣団による救出工作が一度打ち切られていた経緯もあり、今回の接触は行方不明とされてきた人物の消息を裏づける出来事として注目される。

島の住民の間には、山中での発砲や火災など過去の緊張の記憶も残る。湿った風の吹く海辺の集落では「これでようやく終わるのか」との声も聞かれた。鈴木氏の呼びかけが長年孤立してきた小野田氏の心境にどこまで届くのか、関係者は固唾をのんで見守っている。

— RekisyNews 社会面 【1974年】

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