【パサデナ 2月20日】
アメリカの宇宙探査がまた一つ、月着陸に向けた巨大な足跡を記した。航空宇宙局(NASA)の月探査機「レインジャー8号」は本日午前、月面の「静かの海」に予定通り衝突し、その任務を完遂した。驚くべきことに、同機は月面に激突するまでの23分間に、7137枚という膨大な数の高解像度写真を地上へ送り届けた。
レインジャー8号は今月17日にケープカナベラルから打ち上げられ、順調に月への航路を辿った。本日、月面に接近すると同時に搭載された6台のテレビカメラが作動を開始。高度約2500キロメートルから、衝突直前のわずか数百メートルという至近距離に至るまで、人類がかつて見たことのない月面の詳細な地形を次々と捉えた。
送信された映像には、大小無数のクレーターや、岩石が散在する平原の様子が鮮明に映し出されている。特に最終盤に送信された写真は、解像度が極めて高く、数メートルの大きさの物体まで判別が可能だという。これら膨大な画像データは、有人月着陸計画「アポロ計画」において、宇宙飛行士が搭乗する着陸船の安全な着陸地点を選定するための不可欠な資料となる。
NASAのプロジェクト関係者は「今回の成功により、月面が着陸に耐えうる比較的平坦な地質であることが裏付けられつつある」と興奮気味に語った。昨年成功したレインジャー7号に続き、今回も完璧な成果を収めたことで、アメリカの月探査技術の信頼性は決定的なものとなった。
現在、カリフォルニア州パサデナのジェット推進研究所(JPL)では、送られてきたばかりの写真を現像・分析する作業が不眠不休で進められている。科学の目が捉えた「静かの海」の荒涼たる美しさは、有人探査という次なる人類の夢が、もはや空想ではなく確かな現実であることを物語っている。
— RekisyNews 社会面 【1965年】
