作家・小林多喜二氏、築地署にて急死 ── 治安維持法下の検挙、「心臓麻痺」の発表に疑念広がる

【東京 2月20日】

本日午後、わが国を代表するプロレタリア文学の旗手、小林多喜二氏(29)が、留置中の築地警察署において死亡した。当局の発表によれば、死因は「心臓麻痺」とされているが、検挙からわずか数時間での急死という異例の事態に、文壇や関係者の間では大きな衝撃と困惑が広がっている。

小林氏は本日正午頃、赤坂の路上において、共産党の活動に関与していた疑いで特高警察(特別高等警察)により検挙された。そのまま築地署へ連行され、厳しい取り調べを受けていた模様だ。午後7時過ぎ、警察側から家族に対し、小林氏が署内で体調を崩して死亡した旨の通知がなされた。

小林氏は、過酷な労働実態を描いた『蟹工船』や、弾圧の様相を告発した『不在地主』などの著作で知られ、若者や労働者を中心に熱狂的な支持を集めていた。一方で、反戦的な主張や社会主義運動への傾倒により、当局からは治安維持法違反の疑いで厳しくマークされていた。

今夜、遺体が安置された築地署には、急報を聞きつけた作家仲間や友人が次々と駆けつけた。しかし、警察側は厳重な警備を敷き、遺体との面会を制限している。面会を許された数少ない関係者の証言によれば、小林氏の遺体には全身に青黒い斑点があり、取り調べの過程で苛烈な拷問が行われたことを示唆する痕跡が見られたという。

政府および警視庁は、今回の事件について「法に基づく適正な手続きの中での不幸な病死」との立場を崩していないが、言論の自由が狭まる中でのこの悲劇に対し、民衆の間には言葉にならない沈黙の憤りが渦巻いている。一本のペンをもって不条理に抗い続けた若き才能は、冷たい独房の中でその短すぎる生涯を閉じた。

— RekisyNews 社会面 【1933年】

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