【東京 2月20日】
本日、我が国の憲政史上において極めて重要な転換点となる第16回衆議院議員総選挙が全国一斉に実施された。今回の総選挙は、大正14年に成立した普通選挙法に基づく初めての選挙であり、これまでの「納税額による制限」が完全に撤廃され、満25歳以上の男子すべてに参政権が与えられた日本初の男子普通選挙である。
早朝から全国各地の投票所には、これまで国政に参加する権利を持たなかった労働者や農民、若者たちが長い列を作った。有権者数は、前回の約328万人から一挙に約1240万人へと、4倍近くに膨れ上がっている。この膨大な「新有権者」の動向が、今後の政局を左右するのは確実であり、各政党はかつてない激しい選挙戦を繰り広げてきた。
政権を担う田中義一内閣の立憲政友会と、野党第一党の立憲民政党が熾烈な議席争いを展開する中、今回の選挙ではもう一つの大きな変化が見られた。それは、無産政党(社会主義・労働者政党)の本格的な参戦である。社会民衆党や労働農民党などが、生活の改善や社会変革を掲げて立候補しており、庶民の切実な声が議会に届くかどうかも大きな焦点となっている。
市中の至る所には候補者のポスターが貼り出され、演説会場では「普選の勝利」を叫ぶ声が響き渡った。投票を終えたある青年は「自分たちの一票で国を動かせる実感が湧いた」と興奮気味に語り、高齢の男性は「納税額で区別されない時代が来るとは」と感慨深げに目を細めていた。
一方で、政府による過激な思想への警戒や選挙干渉の疑いも報じられており、自由な意思がどこまで守られるかという課題も残されている。しかし、国民が等しく主権の一端を担うというこの「民本主義」の結実は、日本近代史における大きな勝利と言えよう。明日の開票結果は、新しい時代の扉を叩く音となるに違いない。
— RekisyNews 社会面 【1928年】
