【東京 2月18日】
内務当局は本日、雑誌『中央公論』3月号を発行禁止(発禁)とする処分を決め、同号に南京従軍記「生きてゐる兵隊」を掲載した作家・石川達三と、編集に当たった雨宮庸蔵、発行人の牧野武夫を検挙した。関係筋によれば、掲載作には戦地の実情を描いた記述が多く、当局は治安・風俗の維持の観点から問題視したとされる。
書店には同号の入荷を見込んでいた店もあり、午前中から「回覧禁止」の通達が広がると、店頭では事情を尋ねる客が足を止めた。編集部周辺には記者が集まり、関係者の出入りを見守る場面もあった。出版関係者は「雑誌が発売前に消えるのは衝撃だ」と語り、同業の間に動揺が走った。
一方、文壇では、戦地の見聞を活字にする試みがどこまで許されるのか、線引きが一段と厳しくなるとの見方が強い。今回の処分は、作品内容のみならず編集・発行の責任も問う形となり、言論の扱いがいよいよ“警察の判断”に委ねられるとの懸念も出ている。市中では「伏字だらけでも止められるのか」との声があり、戦時下の出版をめぐる空気はさらに硬くなりそうだ。
— RekisyNews 社会面 【1938年】
