極寒の頂に一人立つ ーー 植村直己、マッキンリー冬季単独登頂に成功

【アラスカ 2月12日】

北米大陸最高峰マッキンリー山(標高約6,200メートル)において、日本人冒険家の植村直己氏が、冬季としては前例のない単独登頂に成功した。厳冬期の同山は烈風と氷点下数十度に及ぶ寒さで知られ、これまで多くの登山隊の前進を阻んできたが、植村氏は支援隊を伴わず、単身で頂に到達した。

現地関係者によると、植村氏は長期間にわたり周到な準備を重ね、装備を最小限に抑えた行動で高度を稼いできたという。山中では吹雪に見舞われる場面も多く、テント設営や食料確保も困難を極めたとされる。それでも氏は無線連絡を通じ、「順調に進んでいる」と短い報告を残していた。

この快挙は、冬季登山の常識を覆すものとして、登山関係者の間に大きな衝撃を与えている。特に、冬季・単独・高峰という三条件を同時に満たした登頂は極めて異例であり、世界の登山史に残る成果と評価する声も上がっている。

一方で、山頂到達の翌日以降、植村氏からの連絡は途絶えている。下山途中に天候が急変したとの情報もあり、関係者は氏の無事を強く願いながら、状況の把握に努めている。極地探検や高峰登山で数々の実績を重ねてきた植村氏だが、冬のマッキンリーは依然として過酷な試練の場である。

世界の登山界は、偉業の達成と同時に、下山の行方を固唾をのんで見守っている。

— RekisyNews 社会面 【1984年】

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