【ローマ 2月11日】
本日、皇帝ネロの義弟にあたるブリタンニクスが、宮廷で開かれた宴の最中に急死した。周囲では病による発作と説明されているが、毒殺の疑いが極めて濃いと見る声が広がっている。
ブリタンニクスは先帝クラウディウスの実子であり、血統上は皇位継承の正統性を備えた存在であった。クラウディウスの死後、養子として迎えられたネロが帝位に就いたが、成長するにつれ、元老院や市民の間では「真の皇子」としてブリタンニクスを推す声も密かに強まっていた。
今夜の宴では、ブリタンニクスに供された冷酒を口にした直後、突然激しい痙攣と呼吸困難に襲われ、そのまま息を引き取ったとされる。同席していた皇帝ネロは動揺を見せず、持病の発作であるとして宴の継続を命じたという。だが、従者や貴族の多くは不審の念を抱き、宮廷内には重苦しい空気が漂っている。
皇帝の生母アグリッピナも、この出来事に強い衝撃を受けたと伝えられる。かつて彼女自身がブリタンニクスを後継から遠ざけてきた経緯を思えば、今回の急死は宮廷権力闘争の帰結と見る向きは少なくない。
ブリタンニクスの死により、皇位を脅かす存在は消え、ネロの権力は一層固められた形となった。だが、毒の噂はローマ市中に急速に広まり、若き皇帝の治世に早くも暗い影を落としている。
— RekisyNews 宮廷面 【55年】