【ベルリン 2月10日】
東西の境界線が走るベルリン郊外の橋で本日、米国軍人フランシス・ゲーリー・パワーズと、米国で収監されていたソ連諜報員ルドルフ・アベルの身柄交換が実施され、両名はそれぞれ祖国へ引き渡された。空中偵察機撃墜を端緒とする長期拘禁が、外交交渉の末に決着を迎えた形である。
現場となったのは、東西の管理区域を隔てる要衝の橋。早朝から厳重な警備が敷かれ、関係者以外の立ち入りは厳しく制限された。双方の当局者が確認手続きを行い、合図とともに両名は中央地点で引き渡された。交渉の経緯は公表されていないが、直接対話と秘密折衝が重ねられてきた結果とみられる。
パワーズは、領空侵犯の疑いで裁かれ拘禁されていた。一方のアベルは、諜報活動に関与したとして有罪判決を受け、米国内で服役していた。今回の交換は、対立が続く両陣営が限定的な実務合意に到達した稀有な例として受け止められている。
ベルリンの街では、事態の進展を見守っていた市民が静かに行方を見送った。緊張の最前線に立つこの都市で、武力ではなく交渉によって局面が動いた事実は、今後の外交の行方に一石を投じるものとなりそうだ。
— RekisyNews 国際面 【1962年】
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