【東京 12月13日】
ラジオ東京テレビ(KRテレビ)で本日、新たな海外紀行番組 『兼高かおる世界の旅』 が放送を開始した。世界各国を自ら歩き、暮らし・文化・人々の姿を丁寧に取材して紹介するという企画は、テレビ黎明期の日本ではきわめて斬新であり、初回放送から視聴者の注目を集めた。
番組の案内役を務めるのは、国際線スチュワーデスの経験も持つ 兼高かおる 氏。流暢な英語と豊かな国際感覚を武器に、海外の風景を「自分の目で見て、自分の言葉で伝える」ことを信条としており、取材からナレーションまでを一手に担うスタイルが大きな特徴だ。制作スタッフによれば、兼高氏は初回放送に向けて綿密な現地下調べを行い、「旅人の視線を忘れないように心がけたい」と語ったという。
初回放送では、異国の市場、街並み、人々との交流などが軽快な語り口で紹介され、視聴者からは「見たことのない世界にわくわくした」「テレビで本当に海外を感じられた」といった声が寄せられた。海外旅行がまだ一般的でない今、番組は“窓の向こうに広がる世界”として多くの家庭の関心を集めそうだ。
背景には、戦後復興を経て国際社会へ再び歩み出した日本で、海外への関心がじわじわと高まっているという事情がある。広告関係者は、「これから国際交流や海外旅行への需要が伸びる。番組の役割は大きい」と期待を寄せる。
一方、海外取材には危険や困難がつきまとう。スタッフの一人は、「無理をせず、しかし大胆に行きたい。日本の視聴者が見たことのない景色を届けたい」と語り、安全と挑戦の両立を課題に挙げた。
テレビという新しい媒体が本格的に広がり始めた現在、『兼高かおる世界の旅』は“世界を知る時代”の幕開けを告げる番組となるかもしれない。
— RekisyNews 文化面 【1959年】
