山田耕筰「勝鬨(かちどき)と平和」ついに初演──“日本人初の交響曲”が帝国劇場で響き渡る

【東京・帝国劇場 12月6日】

本日、作曲家 山田耕筰 による大規模管弦楽作品 「勝鬨と平和」 が帝国劇場で初演され、日本音楽史において重要な節目となる “日本人作曲による初の本格的交響曲の上演” が実現した。会場には多数の聴衆が詰めかけ、新しい時代の到来を予感させる一夜となった。

山田は欧州留学から帰国後、西洋クラシック音楽の作曲・指揮の両面で精力的に活動しており、本日の公演はその集大成ともいえる大舞台。帝国劇場の客席には音楽家、政財界人、学生らが姿を見せ、若き作曲家が挑む“交響曲”に大きな期待が寄せられた。

開演とともに、重厚な金管と静かに広がる弦が劇場を満たし、曲は戦いの緊張と勝利の歓喜、そして “平和への祈り” を描き出した。特に終盤、穏やかな旋律が高らかに広がる場面では、客席に静まり返った緊張と感動が漂った。

演奏後、客席からは大きな拍手が巻き起こり、山田は何度も舞台へ呼び戻された。聴衆の一人である音楽学生は「日本人がこのような規模の交響曲を書き、しかもこれほど堂々と響くとは思わなかった」と語り、評論家の一人は「今日を境に日本の音楽史は新しい段階に入る」と絶賛した。

一方で、「西洋音楽をどのように日本化するのか」という議論も依然として残り、ある知識人は「今日の成功は素晴らしいが、日本独自の響きを今後どう築くかが問われる」と述べた。

それでも、若き作曲家がその情熱と技術で大舞台を成し遂げた事実は揺るがない。

今日の初演は、日本のクラシック音楽が世界水準に近づきつつあることを示す象徴的な瞬間であった。

— RekisyNews 文化面 【1914年】

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