【東京 11月29日】
西洋音楽史上不朽の名作として名高い、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの交響曲第9番 ニ短調 作品125(通称『第九』)が本日、上野の東京音楽学校奏楽堂において、全四楽章を通じて日本で初めて一般聴衆の前で上演された。
これは、東京音楽学校が総力を挙げて取り組んだ歴史的な試みであり、本邦における西洋クラシック音楽の受容において画期的な出来事として記憶されるであろう。
演奏には、同学校の教員、生徒、および卒業生が中心となって編成された大規模な管弦楽団と合唱団が動員された。特に、第四楽章の「歓喜の歌」における合唱は、日本人の合唱隊によってドイツ語で歌い上げられ、会場に集まった満員の聴衆に深い感銘を与えた。
この曲は、独唱と合唱を交響曲の終楽章に取り入れた異例の構成と、人類愛と平和を謳う壮大な詩の内容から、既に西洋では最高の芸術作品の一つとして崇められている。指揮は、ドイツより招聘されたグスタフ・クローン氏(東京音楽学校教授)が務め、熱のこもった指導のもと、難易度の高い大曲を見事にまとめ上げた。クローン氏は、在日期間中にベートーヴェンの交響曲の多くを日本に紹介してきた功労者であり、この『第九』初演は彼の総仕上げ的な仕事となった。
演奏終了後、聴衆からは惜しみない拍手と喝采が鳴り響き、中には感極まって涙ぐむ者の姿も見られた。長年にわたり西洋音楽の普及に尽力してきた関係者たちは、今回の成功が、日本国内の音楽水準を飛躍的に向上させる契機となると確信している。
— RekisyNews 文化面 【1924年】
