【ロンドン 11月24日】
本日、英国の自然科学者チャールズ・ダーウィン氏による新著『種の起源（On the Origin of Species）』がジョン・マレー社より出版された。副題は「自然選択による種の保存について」。従来の創造論に一石を投じる革新的な理論書として、学界および一般読者の間で大きな波紋を呼びそうだ。
ダーウィン氏は若き日に英国海軍の測量船ビーグル号に乗り込み、南米大陸やガラパゴス諸島などを調査航海。その観察記録をもとに、長年にわたり生物の多様性と変化の原因を探求してきた。本書では、自然界における「適者生存」と「自然選択（ナチュラル・セレクション）」という概念を軸に、種が固定された存在ではなく、環境との相互作用によって変化しうるものだと論じている。
中でも、人工交配による家畜や作物の変化を引き合いに出し、自然界にも同様の選別圧が働くことを主張。また、化石記録や地理的分布、器官の痕跡など多方面の証拠を挙げて、種の変化は偶発的ではなく漸進的であると説いている。
刊行初版はわずか1,250部ながら、すでに初日の段階で完売が報じられており、学者だけでなく知識人や聖職者の間でも議論が始まっている。一方、創造主による定常的な種の創造を信じる従来の神学的世界観との衝突も避けられず、宗教界からの反発も予想される。
ダーウィン氏は「まだ理論の全容を示したわけではない」としつつも、今後は人類の起源や生物全体の系統にも視野を広げた研究を進める意向を示している。
一冊の本が、自然観の根底を揺るがすことになるのか──その答えは、これから始まる科学と信仰の対話の中にある。
— RekisyNews 科学面 【1859年】
