【東京 11月16日】
東京女子師範学校附属の幼稚園が本日開園し、日本で初めてとなる官立の幼児教育施設が誕生した。近代教育制度の整備が進む中で、幼少期からの教育の必要性が高まっており、国として体系的な幼児教育に乗り出す重要な節目となった。
新園舎は東京女子師範学校(神田一ツ橋)に隣接して建設され、園庭には遊具が並び、明るい窓を備えた教室が整えられている。初日は保護者に手を引かれた子どもたちが緊張した面持ちで登園し、先生らが迎え入れた。園では歌唱・遊戯・図画などを中心とした活動が予定され、「遊びを通して子どもの心身を育む」方針が示されている。
設立の背景には、明治政府が推進する教育改革がある。女子教育を担う師範学校では、幼児教育の専門知識と指導法を備えた教師を育成する必要性が指摘されており、今回の附属幼稚園はその実践の場として期待されている。文部省関係者は「幼い子どもの成長を理解したうえでの教育が、日本の将来にとって欠かせない」と語った。
欧米ではすでに幼稚園制度が普及しつつあり、日本でも家庭任せであった幼児の教育を社会全体で支える動きがようやく形になった。保護者からは「子どもが新しい世界に触れられる場ができた」と歓迎の声が上がる。幼い笑顔が響くこの施設は、今後の幼児教育の方向を示す試金石となりそうだ。
— RekisyNews 教育面 【1876年】
