岡田嘉子氏、約35年ぶりの帰国──波乱の人生に静かな幕開け

岡田 嘉子

【東京 11月13日】

本日午後、女優であり元左翼活動家の岡田嘉子氏(70)が、約35年ぶりにソ連から日本へ帰国した。羽田空港に到着した岡田氏は、待ち受けた報道陣の前で穏やかな表情を浮かべ、「懐かしい祖国の空気を深く吸い込みました」と短く語った。

岡田氏は戦前、映画界で人気を博した女優で、1937年に演出家・杉本良吉氏とともに満州を経由しソ連へ亡命。杉本氏は同年中に粛清により消息を絶ち、岡田氏も過酷な収容生活を経験。その後、モスクワ放送の日本語アナウンサーとして活動を続けていた。

長年、帰国の意志は不透明とされていたが、今回、日ソ両政府間の交渉によって、ようやく帰国が実現。空港には旧知の映画関係者や支援者が駆けつけ、温かな出迎えが行われた。

岡田氏は今後、都内での生活を予定しており、「静かに余生を過ごしたい」と述べている。波乱に満ちた人生を歩んだ岡田氏の帰還は、昭和史の一幕に静かな余韻を残すものとなった。

— RekisyNews 社会面 【1973年】

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