【サンクトペテルブルク 11月10日】
本日、イタリアの巨匠ジュゼッペ・ヴェルディによる新作オペラ『運命の力(La forza del destino)』が、帝室マリインスキー劇場にて華々しく初演された。ヴェルディは『リゴレット』『椿姫』などで知られる19世紀オペラ界の第一人者であり、今回の新作にも大きな注目が集まっていた。
台本はフランチェスコ・マリア・ピアーヴェが執筆し、スペインの戯曲『ドン・アルヴァロ、あるいは運命の力』(アンヘル・デ・サアベドラ作)を基に構成されている。愛と復讐、そして運命に翻弄される若者たちの悲劇を壮大なスケールで描き出す本作は、開演前から皇族や貴族らの関心を集め、劇場は満席となった。
音楽面では、劇的な序曲と重厚な合唱、緻密なアリア構成が際立っており、ヴェルディの円熟期を示す傑作との評価も早くも上がっている。特に、運命の主題を象徴するモチーフは聴衆の心に強い印象を残した。
当初この作品は、イタリアではなくロシア皇帝アレクサンドル2世の要請を受けて作曲され、ヴェルディが直接サンクトペテルブルクに赴いて準備に関わるなど、国際的な協力体制で進められたことも話題となっている。
ヴェルディは初演後、満場の喝采を浴びながら舞台に登場し、「この物語に込めたのは、人間の弱さと力、そして避けられぬ運命の重みだ」と語った。
『運命の力』は今後、ヨーロッパ各国の歌劇場での上演も計画されており、ヴェルディ作品の中でも重要な位置を占める作品になることは間違いない。
— RekisyNews 文化面 【1862年】
