【リンツ 11月4日】
若き作曲家ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト（27）は本日、当地リンツにて、自ら指揮を務める演奏会で新作《交響曲第36番 ハ長調 K.425》を初披露した。
この楽曲は、わずか4日間で書き上げられたとされ、その完成度の高さに聴衆は驚嘆の声を上げた。
モーツァルトは、ザルツブルクからウィーンへ向かう途中、夫人コンスタンツェとともにリンツに立ち寄った。急遽開かれることとなった演奏会のために滞在先のハウスベルク伯爵の館で短期間に作曲。完成した作品は本日、市内の劇場で初演され、満場の観客がその壮麗な響きに酔いしれた。
交響曲は華やかな第1楽章に始まり、しっとりとしたアンダンテ、軽やかなメヌエット、そして圧巻の終楽章プレストへと続く構成。特に冒頭の堂々とした序奏と、緻密なオーケストレーションは、モーツァルトの成熟した交響的手腕を感じさせる内容となっている。
観客からは「まるで神が書かせたようだ」「あの短期間でこの完成度とは信じがたい」など、称賛の声が相次ぎ、リンツの夜は興奮に包まれた。
この新作は今後、ウィーンなど他都市でも演奏されることが期待されている。
“奇跡の4日間”が生んだ交響曲は、音楽史に残る傑作として語り継がれることになりそうだ。
— RekisyNews 文化面 【1783年】
