小津安二郎監督の新作『東京物語』、本日より全国公開開始――老夫婦の旅路に静かな共感の声

【東京 11月3日】

名匠・小津安二郎監督による新作映画『東京物語』が、本日より全国各地の劇場にて一斉公開された。主演は笠智衆東山千栄子、脚本は野田高梧と小津監督自身の共同執筆によるもので、戦後の家族の姿を静かに描いた作品として早くも高い評価を集めている。

物語は、広島県尾道から上京する老夫婦と、東京で暮らす子どもたちとの再会を軸に展開。現代社会における家族関係の変化や孤独、世代間のすれ違いを、感情の起伏を抑えた繊細な演出で描き出している。

中でも注目を集めているのは、亡き息子の嫁である原節子演じる紀子の存在。血縁ではない彼女だけが老夫婦に寄り添い続ける姿は、「家族とは何か」への静かな問いかけとなって観客の胸に響く。映像には、小津監督独自のローアングルや固定カメラがふんだんに用いられ、日常の中にある情感を深く掘り下げている。

封切り初日の都内劇場では満席が続出し、鑑賞後には静かに涙をぬぐう観客の姿も目立った。ある中年男性は「まるで自分の両親を見ているようだった」と語り、老婦人は「寂しいけれど優しい、忘れられない映画になる」と感想を漏らした。

小津監督は「派手な出来事はないが、日本人の心に寄り添うような映画を作りたかった」と語っており、戦後日本における“家族のかたち”を見つめ直す作品として、今後長く語り継がれる一本となる可能性が高い

— RekisyNews 映画面 【1953年】

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