ラジオが全米に恐怖を――火星人襲来と誤信、「宇宙戦争」放送で一部聴取者が大混乱

【ニューヨーク 10月30日】

米CBSラジオは本日夜、俳優・演出家オーソン・ウェルズ氏(23)が主演・演出したラジオドラマ『宇宙戦争』を放送。H・G・ウェルズの小説に基づき「火星人がニュージャージー州に上陸した」という架空の侵略劇を“実況形式”で描いた内容であったが、一部のリスナーがこれを実際のニュースと信じ込み、各地で混乱が生じた

放送は夜8時から、通常の音楽番組を中断する形式で始まり、「グローヴァーズミルに落下物が確認された」「奇妙な生物が現れ、熱線で人々を襲撃している」と緊迫したトーンで進行。ニュース中継風の演出により、多くの聴取者が本当の緊急事態と誤認した。

番組終了後、CBSには数百件の問い合わせが殺到。ニューヨーク、ニュージャージーでは警察や消防に「避難すべきか」との連絡が相次ぎ、一部の教会では緊急礼拝が開かれたとの報もある。

パニックの規模は限定的だったとされるが、報道各社は翌朝一面で「ラジオ放送が市民を混乱に陥れた」と伝え、全米に波紋を広げている。ウェルズ氏はインタビューで「恐怖を与える意図はなかった」と釈明した。

今回の事件は、マスメディアの影響力と情報の受け手側のリテラシーを問い直すものとなった。ラジオという新しいメディアの可能性と危うさが、強烈なかたちで露呈した形だ。

— RekisyNews 社会面 【1938年】

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