ドビュッシー『夜想曲』、全曲初演――幻想と色彩の音楽、ついに三篇揃う

【パリ 10月27日】

本日、パリの国民音楽協会(Société Nationale de Musique)による演奏会にて、クロード・ドビュッシー氏作曲の管弦楽作品『夜想曲(Nocturnes)』全3曲が初めて揃って披露され、聴衆を幻想的な音の世界へと誘った。 本作は昨年末に第1曲と第2曲が部分初演されていたが、今回ついに終曲「シレーヌ」を加えた全曲初演が実現し、音楽界の注目を集めていた。

三部構成のこの作品は、第1曲「雲(Nuages)」、第2曲「祭(Fêtes)」、そして終曲「シレーヌ(Sirènes)」からなる。 「雲」は空にたなびく灰色の雲の静かな動きを繊細な音彩で描き、「祭」は祝祭のざわめきを色とリズムで表現。そして初公開となった「シレーヌ」では、女性合唱を加えた音響が水面の煌めきや精霊の歌声を思わせ、聴衆に深い印象を与えた。

印象派音楽の旗手として知られるドビュッシー氏のこの新作は、従来の構造や形式を超え、響きと色彩そのものによって情景を描く革新的な試みとして高く評価されている。一方で、旋律や和声の曖昧さに戸惑いを示す向きもあり、音楽界に新たな議論を巻き起こしている。

作曲者は演奏後、「夜想曲とは自然や光の移ろいを音によって感じ取る試みであり、視覚の印象を音響に翻訳したものだ」と語り、既存の楽式にとらわれない姿勢をあらためて強調した。

今日の全曲初演は、ドビュッシーの芸術観を体現する金字塔的な出来事となり、フランス音楽の新たな局面を切り拓いた。

— RekisyNews 芸術面 【1901年】

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