【パリ 10月16日】
本日、フランスの作曲家クロード・ドビュッシー(43)による交響詩『海(La Mer)』が、パリのシャトレ座にて初演され、近代フランス音楽界に新たな地平を切り拓く作品として注目を集めた。
演奏はラムルー管弦楽団によって行われ、3部構成のこの作品は、ドビュッシーが“交響曲”という名称を用いずに自然の海の運動と印象を音楽で描き出そうと試みた野心作である。
- 第1楽章:「海の夜明けから真昼まで」
- 第2楽章:「波の戯れ」
- 第3楽章:「風と海との対話」
弦や管の繊細な音の重なり、リズムの揺らぎ、和声の大胆な進行が、視覚的な“海”の風景を聴覚で体験させるような構成となっており、多くの聴衆が驚きとともに静かに聴き入った。
ドビュッシーは、これまでにも『牧神の午後への前奏曲』やオペラ『ペレアスとメリザンド』などで、印象主義的手法による音楽表現を確立してきたが、今回の『海』ではより抽象的かつ構造的なアプローチが見られる。
初演においては賛否が分かれたものの、音楽批評家の間では「形式と感覚の融合」「絵画的構築の極致」との声もあがっている。
ドビュッシー自身が「私の音楽は太陽の光を浴びた海に近い」と語るこの作品は、今後の20世紀音楽における大きな指針となる可能性を秘めている。
— RekisyNews 文化面 【1905年】