「悪徳の栄え」わいせつ性認定──最高裁大法廷が有罪確定の判決

【東京 10月15日】

本日、最高裁判所大法廷(全15裁判官)は、フランスのマルキ・ド・サド原作の翻訳書『悪徳の栄え』の出版をめぐる刑事事件に対し、上告を棄却する判決を言い渡した。これにより、翻訳者の澁澤龍彦氏および出版社関係者に対する有罪判決が確定することとなった。

この事件は、1961年、翻訳文学である『悪徳の栄え』の一部がわいせつ文書に該当するとして、刑法175条(わいせつ文書頒布罪)違反で起訴されたことに始まる。翻訳者および出版社は「高い文学的価値がある作品で、わいせつにはあたらない」として無罪を主張していた。

しかし本日の判決では、「作品全体が性欲をいたずらに刺激し、一般人の健全な性的羞恥心を害する」として、地裁・高裁の判断を支持。罰金刑1万円の有罪が最終的に確定した。

この判決により、約8年間にわたる法廷闘争が終結したことになる。

一審以来、国内の言論・表現の自由をめぐる象徴的な裁判として注目されていた本事件は、翻訳文学であっても日本の刑法の適用を免れないという司法判断を社会に投げかけた格好だ。

澁澤氏の弁護団は、「表現の自由を不当に狭めるものであり、強く抗議する」との声明を発表。これに対し、保守系団体からは「出版物による風紀の乱れを防ぐ正当な判決」と評価する声も聞かれた。

翻訳文学に対する規制と芸術表現の境界。その線引きは、今後の出版業界と法曹界において大きな課題となりそうだ。

— RekisyNews 社会面 【1969年】

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