【ニューヨーク 10月15日】
本日、世界的喜劇王チャールズ・チャップリン氏による最新監督・主演作『独裁者(The Great Dictator)』が、ニューヨークのカーネギー・ホールをはじめとする主要劇場で初公開された。戦時下の欧州情勢を背景に、ファシズムを痛烈に風刺した本作は、初日から各地で大きな話題を呼んでいる。
チャップリン氏が演じるのは、架空の独裁国家「トメニア」の専制君主アデノイド・ヒンケル。その外見や演説の様子は、ドイツの現政権を彷彿とさせる人物像として、国内外で注目を集めていた。また、チャップリン氏は本作で初めて本格的なトーキー(発声映画)作品に挑戦しており、ユダヤ人の理髪師役との二役を演じ分けることで、喜劇と政治風刺の両面を見事に融合させている。
特に終盤、理髪師に扮したチャップリン氏が行う平和と人道を訴える感動的な演説シーンは、上映初日にもかかわらず観客から拍手が巻き起こるほどで、映画史に残る名場面との評価も高い。
映画の公開に際し、チャップリン氏は声明を通じて「笑いは権力に立ち向かう武器である。今こそ世界は勇気と寛容さを必要としている」と述べた。
一方、本作はその政治的内容から、一部では上映に慎重な声もある。とりわけアメリカが欧州戦線に対して中立を維持する中で、チャップリン氏の明確なメッセージが今後どのような波紋を呼ぶか、注目される。
— RekisyNews 文化面 【1940年】