“戦後初の希望のメロディー”――映画『そよかぜ』本日公開、「リンゴの唄」が話題に

【東京 10月11日】

本日、戦後初の国産映画として注目を集めていた『そよかぜ』が、都内をはじめとする全国主要都市の映画館で公開初日を迎えた。この作品は、終戦からわずか二か月で製作されたもので、日本映画界の復興に向けた第一歩として関係者や観客から大きな期待が寄せられている。

主演を務めたのは若手女優の並木路子(なみき・みちこ)。劇中で彼女が口ずさむ「リンゴの唄」が、映画の公開に先駆けて各地で放送・演奏され、人々の間で爆発的な人気を集めている。

「赤いリンゴに口びる寄せて…」という印象的な歌い出しで始まるこの楽曲は、戦争の痛みと喪失を抱えながらも、未来への希望を忘れずに歩もうとする心情をやさしく包み込むように描き出し、まさに戦後日本の心の支えとなる“応援歌”として浸透しつつある。

『そよかぜ』は、戦争直後の困難な制作環境の中、大映映画が中心となって企画・製作。GHQの検閲を受けながらも、日本人の生活と希望を描く内容で公開が認められた。公開初日となった本日、都内の映画館には開場前から長蛇の列ができ、入場制限が行われる劇場も見られた。

上映後、劇場を後にした観客の一人は「久しぶりに心が晴れた。あの歌が忘れられない」と目を潤ませながら語った。

『そよかぜ』と 『リンゴの唄』は、焼け跡の中で未来を見つめる人々に、確かな“風”と“音”を届けている。

— RekisyNews 文化面 【1945年】

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