「ジャズ・シンガー」、映画に声が宿る 世界初のトーキー作品が公開

【ニューヨーク 10月6日】

アメリカ映画界における革命的瞬間が6日夜、ワーナー・ブラザース社製作の映画『ジャズ・シンガー』がニューヨーク・ワーナー劇場で初上映されたことで現実のものとなった。

本作は人間の「声」が映画に吹き込まれた、世界初の本格的トーキー(発声映画)として位置づけられ、観客の間に驚きと熱狂が広がっている。

主演を務めたのは人気ヴォードヴィル芸人アル・ジョルスン氏。劇中、ユダヤ系の若者が宗教と芸能の間で揺れながらもジャズ歌手として舞台に立つ姿が、音声付きで描かれる

とりわけジョルスン氏の名台詞「You ain’t heard nothin’ yet!(まだ何も聞いちゃいないぜ!)」は銀幕越しに“発せられた”最初のセリフとして歴史に残ることになりそうだ。

音声再生にはヴィタフォン方式が用いられ、映像とは別に録音された音盤(レコード)を上映中に同期再生する技術が導入された。

劇場内では観客がジョルスン氏の歌声に涙し、口々に「これが未来の映画だ」と語るなど、無声映画時代の終焉を告げる歴史的瞬間となった。

映画関係者によれば、ワーナー社はこの技術を今後さらに進化させ、全編セリフ付きの作品の製作を目指す方針だという。

「『活動写真』は、ついに声を持った」——今夜、観客はその“変わり目”を目撃したのである。

— RekisyNews 芸能面 【1927年】

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